災害への備えとして耳にする機会が増えている「ローリングストック」。
ローリングストックとは、普段から食べている食品や飲料を少し多めに買っておき、日常生活の中で古いものから消費し、食べたり使ったりした分を買い足して補充する備蓄方法です。
「備蓄用の食品を買って、災害が起こるまでしまっておく」という方法とは違い、普段の生活で食品を使いながら一定量をキープするのが特徴です。
消費者庁でも、普段食べている食品を少し多めに買い置きし、食べたら買い足す「ローリングストック法」を食品ロスを抑えながら備蓄する方法として紹介しています。
防災用の特別な食品を一からそろえる必要がないため、家庭でも始めやすい備蓄方法の一つです。
では、ローリングストックは具体的にどのように実践すればよいのでしょうか。
目次
ローリングストックのやり方は「備える・食べる・買い足す」

ローリングストックの基本は、とてもシンプルです。
「備える」「食べる」「買い足す」の3つを繰り返します。
1.普段使う食品を少し多めに買う
まずは、普段から食べたり飲んだりしている食品を、いつもより少し多めに購入します。
たとえば、次のような食品が考えられます。
・水
・レトルトご飯
・カップ麺
・缶詰
・レトルトカレー
・パスタ
・乾麺
・乾パン
・保存用パン
・フリーズドライ食品
・野菜ジュース
・お菓子
ここで大切なのは、「災害時に食べるもの」だけを考えるのではなく、普段から食べているものを中心に選ぶことです。
自分や家族が普段から食べ慣れている食品なら、災害時にも食事に取り入れやすくなります。
2.賞味期限が近いものから食べる
食品を買い置きしたら、ただ保管しておくのではなく、日常の食事で使います。
このとき、賞味期限が近いものから使うことがポイントです。
たとえばレトルトカレーを10個ストックしている場合、古いものから食べ、新しく購入したものを奥に入れます。
この方法なら、食品が長期間放置されるのを防ぎやすくなります。
消費者庁も、ローリングストックでは賞味期限の近いものから食べ、食べた分を買い足して補充する方法を紹介しています。
3.食べた分を買い足す
食品を使ったら、その分を買い足します。
たとえば、レトルトご飯を3個食べたら、新しく3個購入するという具合です。
このサイクルを繰り返すことで、家庭内に一定量の食品を保つことができます。
ローリングストックのポイントは、「まとめて備蓄して終わり」ではなく、普段の買い物と備蓄を一体化させることです。
食品を使ったら補充する習慣を作っておけば、特別な防災準備の日を設けなくても、備蓄を維持しやすくなります。
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災害備蓄セット2

ローリングストックが注目される理由
ローリングストックには、従来の「非常食をしまっておく」方法とは違ったメリットがあります。
特に大きいのが、普段の生活と防災備蓄を組み合わせられることです。
災害が起きてから慌てて食料を探すのではなく、日頃から一定量を確保しておくことで、いざというときの食事に備えられます。
また、消費者庁が紹介しているように、普段から食べることで賞味期限内に消費しやすくなり、食品ロスの削減にもつながります。
ローリングストックのメリット
ローリングストックには、いくつかのメリットがあります。
食品を無駄にしにくい
非常食を購入したものの、気が付いたら賞味期限が迫っていたという経験がある人もいるでしょう。
ローリングストックなら、日常的に食品を消費するため、長期間しまい込んでしまうリスクを減らせます。
賞味期限が近い食品から食べ、新しい食品を補充することで、備蓄を循環させられるのがポイントです。
特別な非常食を大量に買わなくてもよい
ローリングストックでは、普段の食事で使っている食品を備蓄に活用できます。
そのため、災害用として専用食品を大量にそろえる必要がありません。
もちろん、長期保存できる非常食を組み合わせる方法も有効です。
乾パンや保存用パン、アルファ化米などを備蓄しながら、レトルト食品や缶詰などをローリングストックに取り入れる方法もあります。
食べ慣れた食品を備えられる
災害時には、普段とは異なる環境で食事をすることになります。
そんなとき、普段から食べている食品が手元にあれば、食事の選択肢を確保しやすくなります。
消費者庁の食品ロス削減ガイドブックでも、普段から食べることで、災害時に備蓄食品が口に合わなかったり、作り方が分からなかったりする戸惑いを減らせると紹介されています。
防災を特別な作業にしにくい
防災というと、「年に一度まとめて備蓄を確認する」というイメージもあります。
しかし、ローリングストックなら、日常の買い物や食事の延長で備蓄を管理できます。
「食べたら買う」という習慣にしておけば、特別な作業として考えなくても備蓄を維持しやすくなります。
ローリングストックは何日分必要?

では、実際にどれくらいの食品を備蓄すればよいのでしょうか。
内閣府の防災基本計画では、食料などについて「最低3日間、推奨1週間」の備蓄が示されています。
また、2026年に策定された首都直下地震の緊急対策推進基本計画でも、各家庭で発災時に在宅避難生活を送れるよう、最低3日間、推奨1週間分の水・食料などを備蓄するよう周知するとしています。あわせて、ローリングストックの考え方を広めることも盛り込まれています。
そのため、まずは3日分を目標にし、余裕があれば1週間分を確保するという考え方が分かりやすいでしょう。
もちろん、必要な量は家族構成や住んでいる地域、災害リスクなどによって異なります。
1人分だけで考えないことも大切
家庭の備蓄では、人数を考えることも重要です。
大人2人の家庭と、子どもを含む4人家族では、必要な食品量が違います。
たとえば1週間分を備蓄する場合も、「食品を何個買うか」ではなく、家族全員が必要とする量を考える必要があります。
また、乳幼児、高齢者、食物アレルギーがある人などがいる家庭では、それぞれが食べられる食品を用意する必要があります。
農林水産省も、要配慮者向けの食品ストックガイドを公開しており、乳幼児、高齢者、慢性疾患や食物アレルギーのある人など、それぞれの事情に応じた家庭備蓄の必要性を示しています。
ローリングストックにおすすめの食品
ローリングストックに向いている食品には、さまざまな種類があります。
ここでは、普段の食事にも取り入れやすいものを紹介します。
| 食品 | 普段の使い方 | 災害時の使い方 |
|---|---|---|
| レトルトご飯 | 普段のご飯 | そのまま・温めて食べる |
| レトルトカレー | 普段の食事 | ご飯と合わせる |
| 缶詰 | おかず・サラダ | そのまま食べる |
| 乾麺 | パスタ・うどん | 加熱できれば主食に |
| カップ麺 | 昼食・軽食 | お湯があれば調理 |
| フリーズドライ食品 | 味噌汁・スープ | お湯や水で戻す |
| 野菜ジュース | 飲料 | 野菜の補給源の一つに |
| 乾パン | おやつ・保存食 | 調理せず食べる |
| 保存用パン | 朝食・軽食 | 開封して食べる |
| お菓子 | おやつ | エネルギー補給の選択肢 |
ただし、災害時には電気・ガス・水道などが使えないケースもあります。
そのため、食品を選ぶ際は「普段食べるか」だけでなく、「調理に何が必要か」も確認しておくとよいでしょう。
水もローリングストックに取り入れよう
食品と同じように重要なのが水です。
災害時には飲料水だけでなく、調理などにも水が必要になる場合があります。
内閣府や農林水産省などの防災情報でも、水と食料を含めた家庭備蓄が案内されています。
ペットボトルの水などを購入している家庭なら、普段の生活で使いながら買い足すローリングストックに取り入れることができます。
ただし、水は食品とは違い、「飲料用」「調理用」など用途によって必要量を考える必要があります。
家族人数や生活環境に合わせて、必要な量を確認しておきましょう。
カセットコンロも用意しておくと便利
食品を備蓄していても、加熱調理に必要なものがなければ、食べ方が限られる場合があります。
そこで、食品だけでなく熱源についても考えておきたいところです。
農林水産省の「災害時に備えた食品ストックガイド」でも、家庭備蓄について食品だけでなく、熱源の確保を紹介しています。
カセットコンロなどを用意しておけば、電気やガスが使えない場合でも、一定の調理ができる可能性があります。
ただし、カセットコンロなどの器具は、使用方法や換気などの安全面にも注意が必要です。
食品を備えるだけでなく、「災害時にどうやって食べるのか」まで考えておくことが重要です。
ローリングストックで失敗しやすいポイント
便利なローリングストックですが、やり方によっては備蓄がうまく維持できないこともあります。
食べた分を買い足さない
最もありがちな失敗が、食品を食べた後に買い足さないことです。
「ストックがあるから大丈夫」と思っているうちに、どんどん在庫が減ってしまいます。
対策として、「最後の1個を使ったら買う」など、家庭内でルールを決めておくと管理しやすくなります。
奥に新しい食品を入れてしまう
新しく買った食品を手前に置くと、古い食品が奥に残ってしまいます。
基本的には、古いものを手前、新しく購入したものを奥に置くようにすると、先に賞味期限が近い食品を使いやすくなります。
いわゆる「先入れ先出し」を意識する方法です。
普段食べない食品ばかり備蓄する
「防災用だから」と普段まったく食べない食品だけを購入すると、賞味期限管理が難しくなることがあります。
また、災害時に初めて食べることになり、味や調理方法が分からない可能性もあります。
ローリングストックでは、普段から食べる食品を中心に選ぶことがポイントです。
調理方法を確認していない
レトルト食品や乾麺などを大量に備蓄していても、調理に水や熱源が必要な場合があります。
そのため、食品を買う段階で「水だけで食べられるのか」「加熱が必要なのか」「どのくらいの水を使うのか」などを確認しておきましょう。
災害時を想定して、一度実際に調理してみるのも方法の一つです。
ローリングストックと非常食を組み合わせる

ローリングストックを始めるからといって、長期保存用の非常食が不要になるわけではありません。
たとえば、
「普段食べる食品」
+
「長期保存できる非常食」
という形で組み合わせることができます。
乾パンや保存用パン、アルファ化米などの長期保存食品を備えておきながら、レトルト食品や缶詰、飲料などをローリングストックとして循環させる方法です。
こうすれば、普段の食事に使える食品と、災害時に備えて長期間保管できる食品の両方を用意できます。
特に災害時には、食事内容が単調になりやすいため、複数の種類を備えておくことも考えておきたいポイントです。
賞味期限をチェックする習慣を作ろう
ローリングストックでは、賞味期限の管理も重要です。
ただし、「賞味期限」と「消費期限」は意味が異なります。
消費者庁によると、賞味期限は、定められた方法で保存した場合に「おいしく食べられる期限」を示すもので、食べられなくなる期限そのものではありません。一方、消費期限は、期限を過ぎたら食べないほうがよい期限です。
食品を保存するときは、まずパッケージに記載された保存方法を守ることが基本です。
また、一度開封した食品は、期限表示だけに頼らず、早めに食べることも大切です。
ローリングストックでは、食品を定期的に使うため、賞味期限を確認する機会も自然に増やせます。
収納場所を決めておく
ローリングストックを続けるためには、食品の収納場所も重要です。
「家のどこに何があるか分からない」という状態では、せっかく備蓄していても必要なときに使いにくくなります。
そこで、レトルト食品、缶詰、水、乾麺など、備蓄に使う食品の場所をある程度決めておきましょう。
ただし、すべてを一か所に集める必要があるとは限りません。
災害によっては、収納場所そのものが使えなくなる可能性もあります。
家庭の住環境に合わせて、取り出しやすさや安全性も考えながら収納することが大切です。
ローリングストックは防災の日だけで終わらせない
防災備蓄は、9月1日の「防災の日」や防災週間などをきっかけに見直すのもよいでしょう。
しかし、ローリングストックの魅力は、特定の日だけに備蓄を確認する必要がないことです。
普段の買い物で食品を購入し、食べたら買い足す。
この繰り返しによって、日常生活そのものを備蓄管理につなげられます。
消費者庁も、普段利用しているものを少し多めに購入する日常備蓄、つまりローリングストックを災害への備えとして紹介しています。
「防災のために何か特別なことをしなければ」と考えると、準備が負担になってしまうことがあります。
まずは普段よく食べる食品を1〜2種類多めに購入するところから始めるのもよいでしょう。
ローリングストックは食品ロス対策にもつながる
ローリングストックの特徴として、食品を循環させながら備蓄することが挙げられます。
災害用に購入した食品を長期間しまい込むのではなく、日常生活で消費して、その分を補充するためです。
消費者庁の食品ロス削減ガイドブックでも、ローリングストックは「ふだん使いでカンタン備蓄」として紹介されています。
特に、普段から食べる食品を選べば、備蓄と日常の買い物を一体化しやすくなります。
ただし、食品ロスを減らすことを目的に、保存状態の悪い食品や期限を大きく過ぎた食品を無理に食べるという意味ではありません。
食品の保存方法や期限表示を確認し、安全に食べられる状態で管理することが基本です。
今日から始めるローリングストック
ローリングストックは、難しい防災テクニックではありません。
基本は、
「少し多めに買う」
↓
「普段の食事で使う」
↓
「使った分を買い足す」
というシンプルなサイクルです。
まずは、水、レトルトご飯、缶詰、レトルトカレー、乾麺など、普段から使う食品を選んでみましょう。
そのうえで、最低3日分、できれば1週間分を目安に、家族の人数や食べる量に合わせて備蓄量を考えます。
さらに、乳幼児や高齢者、食物アレルギーがある人などがいる場合は、それぞれが食べられる食品も用意しておくことが大切です。
災害への備えというと、特別な非常食を大量に購入するイメージがありますが、ローリングストックなら普段の食事をそのまま防災につなげられます。
まとめ
ローリングストックとは、普段から使っている食品を少し多めに買い置きし、日常生活で消費した分を買い足しながら備蓄する方法です。
基本的な流れは「備える・食べる・買い足す」の3ステップ。
賞味期限の近いものから食べて、新しく購入したものを補充していくことで、食品を循環させながら備蓄できます。
ローリングストックには、
・普段から食べている食品を備えられる
・賞味期限を管理しやすい
・食品ロスを抑えやすい
・特別な非常食を大量にそろえなくても始められる
・日常生活の延長で防災対策ができる
といったメリットがあります。
国の防災情報では、食料や飲料水について最低3日分、推奨1週間分の備蓄が案内されています。
ただし、必要な食品は家庭によって異なります。
家族の人数だけでなく、乳幼児、高齢者、食物アレルギーなど、それぞれの事情も考えて食品を選ぶことが大切です。
また、食品だけでなく、水や調理に必要な熱源なども含めて、「災害時にどうやって食べるのか」まで考えておくと、より実践的な備蓄になります。
まずは、普段よく購入している食品を1〜2種類多めに買うことから始めてみてはいかがでしょうか。
「災害が起きたときのために保存する」のではなく、「普段食べながら、もしものときにも備える」。
この考え方が、ローリングストックの大きな特徴です。

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