名古屋城に隣接する緑豊かな「名城公園」(めいじょうこうえん)から10分ほど歩くと、昔ながらの商いの気配が残る柳原通(やなぎはらどおり)商店街に辿り着く。 肉屋、魚屋、服屋、居酒屋など古くから愛されてきたことが伝わる店と、ラーメン屋、サンドイッチ屋、イタリアンなど新しくこの場に根を下ろした店とが共存している。今回は2025年10月にオープンしたばかりの「Trattoria TAPIRO(トラットリア・タピロ)」のアルバイト・水谷有南さんに取材をした。

水谷さんの本業はプロのソプラノ歌手。名古屋音楽大学の声楽コースを卒業した後、大学院へ進んだ。現在はプロとして各地で歌いつつ、中学と高校で非常勤の音楽の先生、飲食店でのアルバイトの3足の草鞋を履いて、日々懸命に生きている。
水谷さんは、オープン直後すぐこの店で働き始めた。 「頭を使いながら楽しく働けている」と笑顔だった。「飲食店が溢れていて、どの店もそれなりに美味しい。美味しいことが当たり前になっている中で、人気店になる、また来てもらうには工夫が必要だと思うんです。その中でも特に留意するのは、お客様ひとりひとりとの距離感。目の前のお客様は今、私と会話をしたがっているのか、そうでないのかを観察して、接客にあたっている」と教えてくれた。

水谷さんがそうするのには、理由があった。水谷さん自身も「たくさんの人と知り合いたい。仲良くなりたい」という動機で応募をしているが、お店のオーナーからも、「最初は美味しい食事目当てのお客さんも、いずれ人に会うために来店するようになる」と教えられたからだそう。水谷さんはオーナーの教えに深く共感し、そのために自分にできることを日々模索しながら働いている。

「私は、このお店のシェフの作るパスタがこの世で一番美味しいと思っています。ずっとひと口目のような新鮮な美味しさが最後まで続くから。なら、私はまた来てもらえるように、ひとりひとりのお客様に合った心地良い接客ができるよう努めることが大切だと思うんです。」と水谷さん。

確かにここのパスタは、オーソドックスなのに、新鮮な美味しさを保ち続けている。麺はモチモチで、魚介も新鮮だからかプリッとした弾けんばかりの食感。トマトクリームソースもよく絡んで、ムラなく楽しめる。水谷さんが「ずっとひと口目のような美味しさ」というのも納得だ。
また、食材にも拘っていて、食品添加物はなるべく使わない。そうした目に見えない努力を惜しまず、一品一品を細部まで丁寧に手作りされている。だからなのか、食材が余ることはほとんどなく、ランチは地域の特色に合わせた売れ線でメニューが構成できるという。
そんな料理を提供するシェフは「彼女はとても明るく、お客さんともしっかりコミュニケーションが取れる。愛されキャラですね。このお店が発展していく上でいなくてはならない重要な人です」と水谷さんについて語る。
安さではなく、料理の美味しさと、人との心地よい距離感が魅力の「Trattoria TAPIRO」。そうした誠実さの積み重ねが、やがて“人に会いに行く店”をつくっていくのかもしれない。
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Photographer:後藤 華子
name:水谷 有南(みずたに ゆうな)
shop:「Trattoria TAPIRO」(トラットリア・タピロ)
愛知県名古屋市北区柳原4丁目4-4





