掲載日:2026年8月20日(紙面発行日)※この記事は「スマイラー(2026年8月号)」からの転載です。本文中の「今年」「去年」などの時制表現や、月商をはじめとする店舗情報はすべて発行当時(取材時)のものとなります。
「錦糸町ジンギスカン オクノ羊ヤ、本店」は、『錦糸町』駅から歩いて10分ほどの場所に店を構える。株式会社IKI CULTURE WORKS(イキ カルチャー ワークス)は、不動産・福祉事業から派生して飲食事業へ参入した。2022年の開業以来、同店は地域で支持を集め、今年6月には飲食事業を分社化。現在は錦糸町で複数店舗を展開している。飲食未経験の経営陣が、なぜジンギスカン市場に可能性を見出したのか。「今なら個店でも十分勝負できる市場だ」と語る代表の椎名健仁(たけひと)氏と店舗運営を統括する染谷文博(ふみひろ)氏に話を聞いた。
目次
ジンギスカンを、見つける。錦糸町は“ブルーオーシャン”

同社は「オクノ羊ヤ、本店」を皮切りに、他業態の飲食店を毎年1、2店舗開業。昨年には同店の2号店をオープンし、現在、錦糸町で6店舗をドミナント展開している。店のネーミングは、「(店が)商圏ギリギリのラインにあるので、“奥の”方にあっても食べたいジンギスカンのお店、ということでオクノ羊ヤ、です(笑)」。
ジンギスカンの流行は過去に何度も来ている。2000年前半に始まり、現在第四次ブームとも言われている。
「“今回はホンモノ”とは言われていますね。だいぶ定着してきていると思います」(椎名氏)
ジンギスカンの業態でうまくいくと見立てた背景に、開業当時の錦糸町にはジンギスカン店が1店舗しかなかったのもある。実際、開業当初から売上は月商400万円ほどあり、現在は500万円後半まで上がり順調。昨年には2号店を同じ錦糸町エリアに開業し、2店舗ですでに月商1000万円を下らない勢いだ。
「2店舗目で本店の売上が減るかと思ったら、減らなかった。要はジンギスカンを食べる人が増えているということですよね」(椎名氏)
同エリアで競合し、客を奪い合うのではなく、市場を広げられる余地があったのだ。
ジンギスカンを、客目線でつくる。

「飲食事業を立ち上げたとき、誰も飲食業経験がない中で、僕らがお客さんで行った時に嬉しかったことを全部やろう、というノリというか、勢いでやって、そういうマインドで進んできたら割とジンギスカンがうまくいったという感じ」(染谷氏)
「いいものはどんどん取り入れたい」と話す椎名氏は、同業他社の店を多数視察し、生ラムやラム肉とワインやパクチーの組み合わせなどを取り入れた。
“生ラム”とは同社がチルドで豪州から空輸している羊肉のこと。開業当初はチルド輸入肉を提供する店は珍しかった。

一方、さまざまな店を訪れた結果、ジンギスカンや焼肉が醸し出す“男臭い”要素は外した、と椎名氏は語る。
店は全体を“今風”にした。内装は「ネオ居酒屋×バル風のイメージで、ネオンの看板を使って、女性も入りやすい感じを全面に押し出しました」(染谷氏)。
その狙い通り、客層の男女比は六対四と女性客は少なくない。
ジンギスカンを、育てる。約2万人の顧客資産を形成

同店は開業当初からファーストオーダー制を導入。
「客単と原価のコントロールがしっかりできています。やっぱり友達と来て、注文どうするってなった時にセットがありますよと言えば大体そっちにいきますし、そこに間違いない商品を配置しているので、満足度も上がってみんな良し、みたいな」(椎名氏)
セットとドリンクを1杯注文すれば、単価は最低でも3000円超えてくる。もとは客単価4000円で設計していたが、今では5500円まで伸びた。
「わざわざ10分歩いて来店してくれて、皆さん5500円使って帰ってくださるんで、もう珍しさではなく本当に羊肉が食べたくて来てくださってるなという感じですね」(椎名氏)
約2年前からLINE(ライン)を使用したモバイルオーダー制を導入し、コストは増えたが、客単価向上に繋がった。同社が運営する飲食店全体で登録者数は1万4000人ほどにのぼる。昨年2号店を開き、さらに4000人強が増えているため、トータルで2万人近くだ。キャンペーンを打ち出すと予約が集中するという。
「僕らドミナント経営してるので、新しい店を開いたら全員に打つんですけど、何人かは当日に来てくれたりするんで、結構効果は高いかな」(染谷氏)
ジンギスカンを、広げる。

ジンギスカンは同社にとって横展開しやすい業態のひとつだ。
「構造が割とシンプルなので、(成功事例かと言われたら)そうかもしれないです。料理のスキルがあまりいらないのが一番いいですね。(この業態は)もともと利益が結構出る体質なので…。ぶっちゃけ、原価が上がって利益が少なくなったら“ウーロンハイ”を一杯売りにいけば別にペイできるかな、ってそれぐらいの感覚です。それよりも接客で付加価値を高めるとかをかなり重視しています。そのために研修をやって心を磨いたり、そういう方向に結構お金を使っていますね」
今後も鶏焼肉など、新たな業態も展開しつつ、同店も増やしていきたいと椎名氏は意気込む。
ジンギスカンの未来について「僕は結構、牛肉からシフトしていくのかなと思っています。うちでまぁ、5か、10店舗ぐらいになったらフランチャイズもやりたい。12坪ぐらいでオーナーさんが自分で現場立てば。マイナーな駅でも、結構目的来店が強い業態なので、まだまだジンギスカン店がない駅もあるんで、各駅一店舗ぐらいできても全然いけるかなと思っています」
(取材協力)
株式会社IKI CULTURE WORKS
住所:〒130-0022 東京都墨田区江東橋1-13-7 新井ビル
代表取締役:椎名健仁
取締役:染谷文博
(店舗データ)
店名:錦糸町ジンギスカン オクノ羊ヤ、本店
坪数:12.5坪
席数:28席
原価率:32%
客単価:5000円~5500円
月商:600万円(平月)、660万円(繁盛月)
人件費率:23%
家賃比率:2.6%
取材・文:高山浩子
株式会社テンポスホールディングス 広報課所属。月刊飲食業界誌「スマイラー」の特集記事、飲食店レポートの編集・取材・執筆を主に担当。店舗運営のヒントが隠れた「面白い読み物」を届けたく、日々励んでいます。食べ盛り男子2人の母。趣味はこだわりカレー店巡り。





