なぜ多くの飲食店は確定申告で毎年つまずくのか?― 現場にいると見えない「申告あるある」失敗構造 ―

経営ノウハウ

「売上は合っているはずなのに、数字が合わない」
「毎年この時期になると、店のことより帳簿で頭がいっぱいになる」

飲食店の確定申告は、単なる事務作業ではありません。
むしろ多くの店にとっては、1年分の“店の歪み”が一気に表に出るイベントです。

確定申告で毎年つまずく店には、共通する“あるある構造”があります。
今回は、飲食店の経営者・これから開業する方が特につまずきやすいポイントを、現場視点で整理します。

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目次

■  ほぼ全店がここで詰まる

― 「帳簿の問題」だと思っていると、だいたい失敗します ―

確定申告で最初につまずくポイントは、ほぼ例外なくここです。

「数字が分からない」「会計ソフトが難しい」と言われますが、実際には入力以前の段階で詰まっています。

● レシートと領収書が“イベント化”する

月末や年末に、箱や袋から大量のレシートを取り出し、「まずはこれを仕分けるところから…」と始まる状態です。
飲食店は、仕入れ・消耗品・修理・細かい立替が非常に多い業種です。

それを溜めれば溜めるほど、確定申告は作業ではなく“発掘”になります。

何に使ったお金か思い出せない。
私費か経費か分からない。

結果として、手が止まり、気力が削られていきます。

●「これは経費ですか?」で毎回止まる

確定申告の時期になると、「これは落とせますか?」という判断が何十回も出てきます。
この状態は、会計知識の問題というより、日常的に“店のお金”を意識して使っていない構造が原因です。

経費かどうかで迷う支出が多い店ほど、普段から現金管理や立替ルールが曖昧なケースがほとんどです。

● 会計ソフトを入れても楽にならない理由

「ソフトを入れれば解決すると思っていた」という声は非常に多いです。
しかし、実際には入力の苦しさはほとんど変わりません。

理由は単純で、ソフトは“整理された情報”を処理する道具であって、混乱した現場を整えてくれる道具ではないからです。

▶現金と私費が混ざっている。
▶仕入れルートが多すぎる。
▶記録のタイミングが決まっていない。

この状態では、どんなツールを入れても作業量は減りません。

● 本当の問題は「帳簿」ではなく「日常設計」

確定申告でここにつまずく店の多くは、「申告のやり方」を学ぼうとします。

しかし実際に見直すべきなのは、

・お金の使い方
・レシートの扱い方
・記録のタイミング
・現金の流れ方

といった日常の店の設計です。

ここが整うと、確定申告は急に“作業”に変わります。
逆に言えば、ここが崩れている限り、申告は毎年苦しいままです。

■  原価が合わず、初めて“自分の店の怖さ”を知る

― 確定申告は「原価管理の通知表」です ―

確定申告の作業に入って、多くの飲食店が次につまずくのが「原価」です。

売上は出せる。
経費もある程度入れた。
それでも、どうしても原価率が合わない。

ここで初めて、「この店、思っていたより危ないかもしれない」と感じる方は少なくありません。

● 仕入れはしているのに、原価が出ない

「ちゃんと仕入れはしているのに、原価が合わない」この状態は非常によくあります。

原因の多くは、

・仕入れ計上の抜け
・月をまたいだズレ
・現金仕入れの未記録

といった記録の問題ですが、それだけではありません。

● 数字に出てこない“厨房の損失”

飲食店の原価を狂わせる最大の要因は、帳簿に出てこない厨房内の動きです。

・廃棄
・まかない
・試作
・過剰仕込み
・盛りすぎ

これらは売上を生まないのに、確実に原価だけを押し上げます。
日常で把握されていない店ほど、確定申告で一気に噴き出します。

● 在庫を数えていない店ほど、原価は壊れます

期首・期末在庫を数えていない。
冷蔵庫の中身を「だいたい」で見ている。

この状態では、正確な原価はほぼ出ません。
原価は「買った金額」ではなく、「その期間に使った食材の価値」だからです。

在庫を見ていない店は、確定申告で初めて原価の正体不明さに直面します。

● 「売れているのに金が残らない」が確定する瞬間

原価計算を終えたあと、利益がほとんど残っていない数字を見て、言葉を失う方もいます。
ここで多くの方が、「もっと集客しないと」「値上げしないと」と考えます。

しかし実際には、売上の問題ではなく、原価構造の問題であるケースが非常に多いです。

● 確定申告は、厨房の通信簿です

確定申告で原価が合わない店は、厨房の中で何が起きているかを、経営者自身が把握できていない店です。

・何がどれくらい捨てられているのか
・どのメニューが原価を押し上げているのか
・どこでロスが出ているのか

これが見えてくると、確定申告は「怖い作業」から「厨房を改善する資料」に変わっていきます。

■  厨房機器・内装・開業費で必ず止まる

― 飲食店は「すぐ経費にならないお金」が異常に多い業種です ―

確定申告で原価の次に多くの店が止まるのが、厨房機器・内装・開業前後に使ったお金の扱いです。

「これは経費でいいのか」「資産になるのか」「何年で落とすのか」ここで一気に手が止まります。

● 「とりあえず経費にした」が後で一番苦しくなります

開業初年度によくあるのが、細かいことは分からないまま「全部経費に入れておこう」という処理です。

しかし飲食店では、冷蔵庫・製氷機・コンロ・食洗機・内装工事など、金額が大きく、長く使うものが大量に出てきます。

これらは原則として一括経費にできず、資産として分けて処理します。
ここを雑にすると、後から修正が必要になり、申告作業が一気に重くなります。

● 減価償却が分からないまま時間だけが過ぎる

「減価償却」という言葉は知っていても、実際に何をどう分けるのかが分からず、申告期に初めて向き合う方は多いです。

・何年で落とすのか
・途中で買い替えたらどうなるのか
・中古機器はどう扱うのか

飲食店は設備点数が多いため、ここを理解していないと申告=専門用語との戦いになります。

● 開業前後のお金が、ほぼ確実に混ざっています

物件取得費、工事、什器、研修費、試作、備品、消耗品。

開業前後は支出が一気に集中します。

この時期はまだ売上がなく、「これは開業費?」「これは経費?」「いつの分?」という整理ができないまま時間が過ぎてしまうケースが非常に多いです。

結果として、確定申告で最も混乱するゾーンになります。

● 設備投資を理解していない店ほど、数字が読めなくなります

設備や内装は、単なる支出ではありません。
数年かけて回収していく“経営装置”です。

ここを感覚だけで処理すると、

・利益が出ているのか分からない
・どこまで投資していいのか分からない
・税金の感覚もずれ続ける

という状態に陥ります。

● ここで止まる店は、経営判断も止まりやすい

厨房機器・内装・開業費で止まる店は、「お金の性質」を理解しないまま経営している状態です。
逆にここが整理されると、確定申告は「苦行」から「経営数字の確認」に変わります。

飲食店にとって設備とは、厨房であり、同時に財務そのものです。

■  家事按分(かじあんぶん)・現金管理で一気にあいまいになる

家計と経営費をきちんと分けていないと大変です。

― 数字が崩れる店は、「境界線」が崩れています ―

確定申告で設備の次に多くの方が頭を抱えるのが、家事按分と現金管理です。

ここに入った瞬間、「なんとなく」「だいたい」「去年と同じで」という言葉が増えていきます。

● 自宅兼店舗は、ほぼ確実に止まります

自宅と店が同じ場所にある。

もしくは、生活と事業の支出が同じ回線・同じ口座で動いている。
この状態では、電気代・水道代・ネット代・家賃・スマホ代など、どこまでが経費かを説明できなくなります。

割合を聞かれても、「たぶん半分くらい…」という感覚値になりがちです。

● 何%か決められない店ほど、日常が混ざっています

家事按分(あんぶん)は、数字のテクニックではありません。
生活と店の動線が分かれていないことが問題です。

・家族の買い物と一緒に仕入れをしている

・同じ財布から、私費と経費を出している
・現金売上から、そのまま私用支出をしている

この状態では、申告期に正しい割合など出せるはずがありません。

● 現金が多い業種ほど、境界が壊れやすい

飲食店は、いまだに現金比率が高い業種です。
レジ金・釣銭・売上現金・立替・私用支出が混ざると、「合っているか分からない数字」が出来上がります。

レジ締めが弱い店ほど、確定申告では帳簿そのものの信頼性が揺らぎます。

● 家事按分で悩む店は、経営判断も鈍ります

どこまでが店のお金か分からない状態では、

・本当に利益が出ているのか
・設備投資できるのか
・人を雇えるのか

といった判断も曖昧になります。
家事按分で詰まる店は、申告だけでなく、経営そのものが“感覚運転”になりやすいのです。

● 境界線が引けると、数字は一気に静かになります

▶口座を分ける。
▶財布を分ける。
▶支払いルールを決める。

これだけで、確定申告の景色は大きく変わります。
家事按分と現金管理は、節税テクニックではなく、経営インフラです。

ここが整うほど、数字は暴れなくなります。

■  税理士に出しても「来年が楽にならない店」

まとめた数字を経営に生かすということが大事です。

― 丸投げしても、構造が変わらなければ毎年同じ苦しさです ―

「税理士にお願いしているから大丈夫」

そう思っているのに、確定申告の時期になると毎年しんどい。
この状態の店は、決して少なくありません。

● 書類は出しているのに、頭は軽くならない

領収書も渡している。
帳簿も作ってもらっている。
申告書も問題なく出ている。

それでも、

・数字の意味が分からない
・税金が高いのか安いのか判断できない
・来年どうすればいいのか見えない

結果として、「終わった感」だけが残ります。

● 申告が「作業」で終わっている店の特徴

来年が楽にならない店には共通点があります。

・税理士との会話が「提出」と「税額」だけ
・月次の数字を見ていない
・現場と数字がつながっていない

この状態では、確定申告は毎年リセットされます。
積み上がるのは経験ではなく、疲労だけです。

● 税理士は、店を自動で良くしてくれる存在ではありません

税理士は、申告と税務の専門家です。
しかし、厨房の原価管理や現金の流れ、現場オペレーションを設計する立場ではありません。

店の構造が崩れたままなら、どれだけ正確に申告しても、来年は楽になりません。

● 楽になっていく店は「質問の質」が変わります

確定申告を経営に使えている店は、税理士への質問が変わっていきます。

◎「これ、経費になりますか?」から
 「この原価構造はおかしくないですか?」へ。

◎「税金いくらですか?」から
 「来年、ここを変えたら数字はどうなりますか?」へ。

ここで初めて、申告が経営に組み込まれます。

● 申告が変わると、店の一年が変わります

来年が楽にならない店は、確定申告を「過去処理」で終わらせています。
来年が楽になっていく店は、確定申告を「未来設計」に使っています。

同じ申告でも、使い方が変わると、現場の動きも、設備投資も、メニュー構成も変わります。

● 税理士は「丸投げ先」ではなく「経営の翻訳者」です

数字を厨房と経営の言葉に翻訳できるようになると、確定申告は苦行ではなくなります。

税理士に出しているのに毎年苦しいなら、見直すべきは税理士ではなく、数字を経営に使っていない自分たちの構造かもしれません。

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■ まとめ:確定申告は「年1回の行事」ではなく「店の健康診断」です

確定申告というと、「税金を計算して出すもの」「終わらせる作業」というイメージが強いかもしれません。
しかし飲食店にとっての確定申告は、本来それだけではありません。

1年分の売上、原価、経費、投資、現金の流れ。
それらをまとめて見せられる確定申告は、店の内部構造を強制的に可視化するタイミングです。

● 毎年苦しい店ほど、同じ“異常”が出続けます

・原価が合わない
・現金が説明できない
・設備投資の扱いが分からない
・私費と経費が混ざる
・数字を見ても経営に使えない

これらはすべて、申告の問題ではなく、日常における店設計の問題です。
健康診断と同じで、同じ結果が毎年出ているのに何も変えなければ、翌年も同じところで引っかかります。

● 楽に終わる店は、「数字が暴れない構造」を持っています

確定申告が比較的静かに終わる店には共通点があります。

・仕入れと支払いの流れが単純
・現金管理のルールがある
・設備投資の考え方が決まっている
・在庫と原価を見ている
・生活と経営が分かれている

こうした店は、申告の時期になっても、特別なことをしなくて済みます。

● 確定申告は「過去処理」ではなく「次の一年の設計資料」です

確定申告の数字は、単なる結果報告ではありません。

・どこで利益が削られているのか
・どこに無理が出ているのか
・どこを直せば楽になるのか

これがすべて入っています。

確定申告を終えたあとに、「今年はどこを変えるか」を考えられる店ほど、翌年の申告は確実に楽になります。

● 申告が変わると、経営の質が変わります

確定申告を

「早く終わらせたい作業」として扱うか、「店の健康診断」として扱うかで、

その後の一年の経営の質は大きく変わります。

数字は、店を責めるために存在しているのではありません。
店を守るための警告灯です。

● 苦しい申告は、店からのメッセージかもしれません

もし確定申告が毎年つらいなら、それは「やり方」ではなく「店の構造」を見直すタイミングなのかもしれません。
確定申告は、年に一度の税務イベントではなく、飲食店にとっての定期健康診断です。

そこで出た結果をどう使うかが、店の未来を静かに分けていきます。

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