失敗し…ても大丈夫?開業前に誰も教えてくれない「撤退しやすい店の作り方」

出店・開業

飲食店開業というと、「どう成功させるか」「どう繁盛させるか」という話が中心になりがちです。

しかし現場を長く見ていると、本当に経営を苦しめているのは「失敗したこと」そのものではなく、「やめたくてもやめられない構造」を作ってしまったことだと感じます。

内装にお金をかけすぎた、設備が特殊すぎて売れない、原状回復費が払えない。
この状態に陥ると、赤字でも無理に続けるしかなくなり、判断を誤り続けてしまいます。

実は、開業前に「撤退しやすさ」を設計しておく店ほど、経営は安定し、結果的に生き残りやすくなります。
今回はあえて“失敗前提”で考える、「撤退しやすい店の作り方」をお伝えします。

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目次

■ なぜ「撤退しやすさ」を開業前に考えるべきなのか

飲食店開業というと、「どうすれば成功するか」「どうすれば繁盛するか」という話が中心になりがちです。

しかし、現場を長く見ていると、本当に経営を苦しめているのは“失敗したこと”そのものではなく、“失敗したあとに動けなくなること”だと感じます。

赤字でも、方向転換ができれば立て直しは可能です。
ところが、やめることも、変えることもできない構造を作ってしまうと、経営は一気に苦しくなります。

その状態を防ぐ考え方が、「撤退しやすさ」を開業前から設計することです。

● 潰れることより「身動きが取れなくなること」が致命傷です

飲食店にとって本当に怖いのは、赤字になることではありません。
最も危険なのは、「このまま続けるしかない」という状態に追い込まれることです。

内装にお金をかけすぎた、設備が特殊すぎて売れない、原状回復費が払えない。
こうした条件が重なると、撤退が選択肢から消えます。

すると本来は立て直しや撤退を検討すべき局面でも、無理な営業を続けるしかなくなり、資金と体力が同時に削られていきます。

● 「撤退を設計する」は逃げではなく経営技術です

撤退しやすい店を作るというと、弱気な開業のように聞こえるかもしれません。
しかし実際はその逆です。

これは「失敗を想定する」ことではなく、「経営の非常口を用意する」という高度な経営設計です。
最悪の状況を想定している店ほど、初期投資が冷静になり、固定費が重くなりにくく、判断が感情論に傾きません。

結果として、挑戦も修正もできる、経営の可動域が広い店になります。

● 撤退しやすさは、日常経営の安定装置になります

撤退しやすい構造を持つ店は、「いつでもやめられる」からこそ、「落ち着いて続ける」ことができます。
売上が一時的に落ちても過剰に焦らず、設備投資や採用も現実的な範囲で判断できます。

開業前に撤退を考えることは、縁起の悪い話ではありません。
むしろ、長く経営を続けるための安全装置を、最初に組み込むという考え方です。

■ 原状回復しやすい内装は「デザイン」より「構造」で決まります

飲食店の撤退時に、想像以上に重くのしかかるのが原状回復費です。
営業中は意識されにくいものの、閉店時には数十万〜数百万円単位になることも珍しくありません。

だからこそ内装は、「かっこよさ」や「世界観」だけでなく、「どれだけ元に戻しやすいか」という構造視点で考える必要があります。

● 造作の量が、そのまま撤退コストになります

原状回復費の正体は、解体費・撤去費・廃棄費です。
つまり、「どれだけ作り込んだか」が、そのまま「どれだけ壊すか」になります。

◎壁を増やしすぎていないか。
◎床を大きく上げすぎていないか。
◎天井を二重・三重に組んでいないか。

こうした造作ですと営業中は価値になりますが、撤退時にはすべてコストに変わります。

撤退しやすい店とは、「作りすぎていない店」でもあります。

● 設備ルートを固定しすぎないことが重要です

内装で特に注意したいのが、排気・給排水・ガス・電気の通し方です。
これらを壁や床に埋め込みすぎると、撤去時に大規模な解体工事が必要になります。

可能な限り露出配管・露出ダクトを基本とし、「外せる構造」で組むことが、原状回復費を大きく左右します。
見た目よりも、「戻せるかどうか」を優先する視点が重要です。

● “次に貸しやすい店”は経営上の交渉力になります

原状回復しやすい内装は、撤退時だけでなく、営業中の経営にも効いてきます。
居抜きで次が決まりやすい店は、

・途中解約
・更新時
・条件変更交渉

こうした場面で、貸主との話が進みやすくなります。不動産として価値のある内装は、経営者側の交渉材料になります。

● 内装は「自己満足」ではなく「不動産の一部」です

内装は自分の城であると同時に、借り物でもあります。

だからこそ、「自分の理想」だけでなく、「貸主から見た扱いやすさ」「次の借り手から見た使いやすさ」まで考えておくことが、結果的に自分を守る内装になります。

原状回復しやすい店とは、デザインを捨てた店ではありません。構造を冷静に設計した店です。

■ 設備は「使うもの」ではなく「売れる資産」として持ちます

厨房設備は、開業時には「必要経費」として見られがちです。

しかし撤退を前提に考えるなら、設備は単なる道具ではなく、「将来お金に戻る可能性がある資産」として捉える必要があります。

この視点があるかどうかで、撤退時に手元に残る金額は大きく変わります。

● 専用機が増えるほど、撤退は苦しくなります

特定メニュー専用の機械や、店のサイズに合わせた特注機器は、営業中は便利でも中古市場では動きにくいのが現実です。

買い手が限られる設備ほど、価格は大きく下がり、場合によっては処分費用が発生します。

一方、冷蔵庫、コールドテーブル、ガスレンジ、フライヤー、食洗機などの汎用機器は、業態を問わず需要があります。

撤退時に「売れるかどうか」は、導入時点でほぼ決まっています。

・冷蔵庫

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・コールドテーブル

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・フライヤー

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・ガスレンジ

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・食洗機

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などの汎用機器は、状態が良ければ比較的安定して売却できます。

厨房設備は経費であると同時に、「換金性のある資産」でもあります。

● 導入時に見るべきは「性能」より「出口」です

設備選定で本当に見るべきなのは、「何年使えるか」だけではありません。

・中古市場に流通しているか
・主要メーカーか
・標準サイズか
・搬出しやすいか

こうした条件を満たす設備ほど、撤退時の換金性が高くなります。
減価償却ではなく、「出口価格」を意識することで、設備投資は一気に経営判断に変わります。

● レンタル・中古・新品を戦略的に使い分けます

すべてを新品購入にする必要はありません。

短期間で見直す可能性がある機器はレンタル、価格が下がりにくい定番機器は中古、衛生基準や故障リスクが高いものは新品、といった使い分けも有効です。

初期費用を抑えながら、撤退時の資金回収率を高めることができます。

● 厨房は「原価を生む場所」であり「資産が眠る場所」でもあります

厨房設備は、日々の売上を生むと同時に、資金が形を変えて眠っている場所でもあります。
撤退しやすい店とは、利益構造だけでなく、「資産構造」まで考えられた店です。

設備を「使うもの」だけで終わらせず、「売れる状態で持つ」。
これが、撤退リスクを大きく下げる厨房設計です。

■ 「いつ撤退するか」を決めてから開業すると経営が安定します

多くの飲食店は、「始め方」は真剣に考えますが、「終わり方」を決めないまま開業しています。

その結果、売上が落ちても、資金が減っても、「もう少し様子を見よう」という判断を繰り返し、気づいた時には選択肢がなくなっているケースが少なくありません。

開業前に撤退ラインを決めておくことは、経営を守るための重要な準備です。

● 撤退ラインがない店ほど、判断が遅れます

撤退基準がないと、経営判断は感情に引っ張られます。

「ここまで頑張ったのだから」
「お客さんがいるから」
「来月は良くなるかもしれないから」

こうした思いは自然ですが、数字が伴わないまま続けると、資金だけが減っていきます。

撤退ラインを決めておくことは、「やめる準備」ではなく、「迷わない準備」です。

● 開業時に決めておきたい3つの視点

最低限、次のような指標は数値で持っておくことをおすすめします。

・月商が〇か月連続でいくらを下回ったら
・運転資金がいくらを切ったら
・借入返済比率が何%を超えたら

これらを決めておくと、「苦しい」という感覚ではなく、「基準を超えたかどうか」で判断できるようになります。

● 最悪を想定すると、日常経営が安定します

不思議なことに、撤退条件を決めた店ほど、日常経営は安定します。

設備投資や人員配置、値付けにおいても、「撤退ラインを下げないか」という視点が入るため、無理な拡大や過剰投資をしにくくなります。

最悪の事態を具体化することで、経営は悲観ではなく、現実的な緊張感を持つようになります。

● 撤退基準は「経営の非常ブレーキ」です

撤退基準は、使わないことが理想です。
しかし、いざという時に踏めるブレーキがあるかどうかで、経営者の判断と精神状態は大きく変わります。

開業前に「いつ撤退するか」を決めることは、店を畳むためではなく、店を守るための設計です。

■ 撤退しやすい店は、結果的に「伸びやすい店」になります

「撤退しやすい店」と聞くと、守りに入った経営を想像されるかもしれません。
しかし実際にはその逆で、撤退しやすさを設計した店ほど、挑戦と修正ができる“伸び代の大きい店”になります。

身動きが取れる構造は、経営のスピードと精度を高めてくれます。

● 固定費が軽い店は、挑戦回数が増えます

撤退しやすい店は、家賃・内装費・設備費がコントロールされています。
つまり固定費と初期投資が過剰ではありません。

この状態だと、

・メニューの入れ替え
・価格改定
・営業時間の変更
・業態の微調整

といった経営改善を、恐れずに試すことができます。

固定費が重い店ほど「失敗できない空気」が生まれ、改善が遅れます。
身軽さは、そのまま経営スピードになります。

● 設計に余白がある店は、方向転換ができます

内装や設備を作り込みすぎていない店は、業態転換が可能です。
ランチ主体から夜営業へ、カフェからテイクアウト強化へなど、売上構造に合わせて形を変えられます。

これは撤退しやすい構造であると同時に、「撤退せずに済む選択肢が多い構造」でもあります。

● 「やめられる安心感」は経営判断を冷静にします

最悪でも終われるという感覚は、経営者の心理を安定させます。
過剰な値下げ、無理な出店、根拠の薄い投資に走りにくくなり、数字に基づいた判断ができるようになります。

精神的な余裕は、経営の質を確実に高めます。

● 撤退設計は「成長設計」でもあります

撤退しやすい店とは、「終わる準備ができている店」ではなく、「続け方・変え方・伸ばし方」が設計された店です。
引き返せる構造を持つ店ほど、長く走れます。

撤退を考えた瞬間から、実はその店は、伸びやすい店になっています。

■ まとめ:撤退を考えた瞬間から、経営は強くなります

「撤退しやすい店を作る」と聞くと、縁起でもない話のように感じる方も多いかもしれません。
しかし本記事でお伝えしてきた通り、撤退を考えることは、店を畳む準備ではなく、店を守る準備です。

むしろ、経営を長く続けるために欠かせない設計思想だと言えます。

● 失敗を前提にするのではなく、選択肢を残すという発想です

撤退設計とは、「どうせ失敗する」という考え方ではありません。
「うまくいかなかった時に、別の道を選べる状態を作る」ということです。

◎内装を作り込みすぎない。
◎設備を売れる状態で持つ。
◎撤退ラインを数字で決める。

これらはすべて、経営の可動域を広げる行為です。

● 撤退を意識すると、開業設計が現実的になります

撤退を視野に入れると、初期投資は自然と冷静になります。

「本当に必要か」「回収できるか」「出口はあるか」という視点が入るため、勢いだけの設備投資や内装工事を防ぐことができます。

結果として、固定費が抑えられ、資金繰りに余裕が生まれます。
これは、黒字化までの時間を短くし、経営を安定させる大きな要因になります。

● 引き返せる店は、続けられる店でもあります

撤退しやすい構造を持つ店は、やめやすい店であると同時に、変えやすい店でもあります。

▶業態を調整できる。
▶規模を変えられる。
▶投資を止められる。

この柔軟性こそが、飲食店経営における最大の強さです。

● 撤退を考えた瞬間から、経営は一段階上に上がります

成功だけを想定した開業は、どうしても視野が狭くなります。
撤退まで含めて設計した開業は、数字・構造・判断基準が揃った経営になります。

潰れない店を目指すより、引き返せる店を作る。
その発想を持った瞬間から、経営は確実に強くなります。

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