【第2回】パン屋開業ナビ — ゼロからの挑戦<コンセプトづくりと物件探しの“沼”へようこそ>

出店・開業

飲食店開業で最初につまずきやすいのが、“コンセプトづくり”と“物件探し”
どちらもワクワクする反面、考えるほど迷いが深くなり、気づけば小さな沼にはまり込んでしまいます。

「どんな店にしたいのか」「どこで出すべきか」――この2つが定まらないと、開業の歯車は動き始めません。
でも安心してください。今回はその沼を、ゆっくり一緒に抜けていくための入口です。

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■  コンセプトは「売りやすさ」で考える

● 「作りたいパン」と「売れるパン」は違います

ユミ「師匠、パン屋って好きなパンを自由に並べていいんですよね?私、ハード系もデニッシュも作りたくて…!」

師匠「いやいや、それが一番ハマりやすい落とし穴なんだよ、ユミさん。“作りたいパン”と“売れるパン”は別物なんだよね。」

ユミ「別物…なんですか?」

師匠「そう。パン屋の売れ筋ってだいたい決まっててさ。食パン、惣菜パン、菓子パン。この3つが売上の主力になる店が多いんだ。特に朝は“買ってすぐ食べられるパン”が強いんだよ。」

● 売れ筋・価格帯・回転率がコンセプトの基準

ユミ「でも、デニッシュとかバゲットとか、専門店みたいなのも素敵ですよね…?」

師匠「もちろん素敵だけど、まずは“売りやすいパン”を中心に考えるのが鉄則。パン屋は回転率が命で、価格帯も150〜250円くらいのパンがよく動く。毎日手に取りやすいパンが強いんだよ。」

ユミ「言われてみれば、私も普段そのくらいの値段のパンを買っています…。」

師匠「そうだろう?だからコンセプトは“自分の好き”じゃなくて“お客さんが買いやすい条件”から逆算したほうがブレない。誰に、どの時間帯に、どういう気持ちで買ってほしいか。これをまず決めると、並べるパンも自然と決まってくるよ。」

● 「作りたいパンを添える」くらいがちょうどいい

ユミ「ってことは、私の“作りたいパン”はあまり並べない方がいいんでしょうか…?」

師匠「そんなことないよ。ただね、“主役にするか”“脇役にするか”の話なんだ。まずは売れるパンを中心にして、そこに自分の個性や好きなパンを少し混ぜる。これが一番うまくいくんだよ。」

ユミ「なるほど…“好き”はゼロにするんじゃなくて、バランスなんですね。」

師匠「そうそう。売れ筋がしっかり売れて、そこに“こだわりの一品”があれば、お客さんは“この店いいな”って感じてくれる。コンセプトづくりって、実は“半分はマーケット、半分は個性”。この配合が大事なんだよ。」

● 最初のコンセプトは“売りやすさ”が正解

ユミ「パン屋さんのコンセプトって、もっと感覚で決めるのかと思ってました…。」

師匠「感覚だけで決めると、だいたい途中で苦しくなるんだよ。だから最初は“売りやすさ”を軸にしておくと、後で自分の色も出しやすい。」

ユミ「売れるパンを軸にする理由、すごく納得しました。」

師匠「よし、その調子。コンセプトはパン屋づくりの“設計図”みたいなもんだから、しっかり固めよう。」

■ 物件探しで絶対にやってはいけない失敗

● 「雰囲気がいい」だけで決めるのは危険です

ユミ「そろそろ物件も探したいんですけど…明るくて雰囲気のいいお店って憧れますよね!」

師匠「ユミさん、それが一番危ないパターンなんだよ。“雰囲気がいいから”で決めて失敗する人、多いんだ。」

ユミ「えっ、そうなんですか?見た目って大事だと思ってました。」

師匠「大事だよ。でもパン屋は“見た目より条件”。機材が多いし熱も出るし、水も電気もガンガン使う。普通の飲食店以上に物件の相性に左右されるんだよ。」

● 給排水・電気容量を見ないと地獄を見ます

ユミ「条件って、どこから見ればいいんですか?」

師匠「まずは“給排水”。パン屋は仕込みで水めっちゃ使うし、シンクの位置や数も大事。それから“電気容量”。オーブン、ミキサー、発酵器…電力をかなり食うから、容量が足りないとブレーカー落ちまくって仕事にならない。」

ユミ「ブレーカーが頻繁に落ちるパン屋…地獄ですね。」

師匠「そうそう。あと排水が弱いと泡だらけで詰まるとか、後から設備工事で何十万〜百万とか平気で飛ぶからね。」

● 窓の数・換気・動線は見落としやすいポイント

ユミ「ほかにも注意点ありますか?」

師匠「めちゃあるよ。たとえば“窓の数”は換気と熱逃がしに関わる。“厨房の動線”は、仕込みと売り場がぶつからないようにできてるかが重要。」

ユミ「動線ってそんなに大事なんですか?」

師匠「大事どころか、店の運営が決まるよ。
たとえば——

・入口近くにレジ
・奥にオーブンとミキサー
・中央に成形と天板置き場

って配置だと、作業が流れるように進むんだ。逆に、入口近くに作業台、奥にレジとかだと、スタッフが毎回行ったり来たりで効率ゼロになってしまう。」

ユミ「なるほど…物件を見たときは“ここに何を置くか”を想像しないといけないんですね。」

師匠「そうそう。“置けるかどうか”じゃなく“動線が成立するかどうか”を見るのがポイント。」

● 最後に残るのは“現実的に成立する場所”

ユミ「物件って、もっと感覚で決めるものだと思ってました…。」

師匠「パン屋は特に“理想より現実”。雰囲気のよさはあとから作れるけど、給排水や電気容量はどうにもならないことが多いからね。」

ユミ「たしかに…現実を知らないまま決めたら危なかったです。」

師匠「物件探しは沼だけど、条件を知っていればちゃんと抜け出せるよ。焦らず、冷静に見ていこう。」

■ パン屋特有の“匂い”“熱”問題

● いい匂いは武器だけど、物件次第で一気に“敵”にもなる

ユミ「パン屋さんって、いい匂いが魅力ですよね!私、あの焼きたての香りが店の武器になると思ってて…。」

師匠「もちろん武器にはなるよ。でもね、物件によっては“大きなデメリット”にも変わりやすいんだ。」

ユミ「えっ、いい匂いがデメリットになるんですか?」

師匠「そうなんだよ。排気が弱い物件だと匂いが店内にこもってしまって、“ちょっとキツいな…”と感じるお客さんも出てくる。それに、上階が住居だとクレームにつながることもあるんだ。」

● 熱対策を甘く見ると作業が崩壊します

ユミ「匂いだけじゃなくて、熱も問題なんですよね?」

師匠「そうだね。パン屋は“熱との戦い”でもあるんだ。オーブンが数台あれば、それだけで室温がグッと上がる。換気が弱い物件だと、夏場には店内が40度近くになることもあるんだよ。」

ユミ「40度…!?そんな中で働くなんて無理です…。」

師匠「正直、無理だと思うよ。スタッフは疲れるし、生地もだれるし、バターは溶けて扱いづらくなる。冷蔵庫にも負担がかかって、エラーが出ることだってある。そうなると作業どころじゃなくなるんだ。」

● 換気の強さ・ダクトの通し方が生死を分ける

ユミ「じゃあ物件の時点で何をチェックしたらいいんですか?」

師匠「まずは換気、排気、空調だね。これはパン屋にとって絶対に外せない要素だ。特に“ダクトを外に通せるかどうか”は最優先で確認してほしい。これが難しい物件は、例え家賃が安くても避けた方がいいよ。」

ユミ「ダクトって、そんなに重要なんですね…。」

師匠「とても重要なんだよ。ダクトが弱いと匂いも熱も逃がせなくて、店中が蒸し風呂みたいになってしまう。それに、ダクトの通り道が曲がりすぎていると排気の力が落ちることもあるんだ。」

● “熱と匂いを逃がせるか”で物件の価値が決まる

ユミ「パン屋って、見えないところにこんなリスクがあるんですね…。」

師匠「そうなんだよ。だからパン屋の物件は“見た目の雰囲気”より、“熱と匂いをどう逃がすか”を最優先で考えたほうがいい。ここがクリアできないと、どんなに素敵なコンセプトを作っても上手くいかなくなってしまうからね。」

ユミ「物件を見るとき、換気とダクトは絶対にチェックします!」

師匠「うん、その視点を持てれば、後のトラブルはかなり減らせると思うよ。」

■ まとめ:コンセプト × 物件条件が“開業の土台”になります

● 「なんとなく」では進めないのがパン屋の現実

ユミ「今日はコンセプトと物件の大事さをすごく実感しました。“好き”だけじゃ決められないんですね。」

師匠「そうだね。パン屋は見た目や雰囲気より“現実面”の影響が大きいんだ。コンセプトが曖昧だと、商品も価格も決めづらいし、物件との相性も見えなくなる。逆に、コンセプトがハッキリすると“合う物件、合わない物件”が自然と判断できるようになるよ。」

● 売れるパンを意識したコンセプトづくり

ユミ「コンセプトって、もっと感覚的なものかと思ってました。」

師匠「実は“売れやすさ”を基準にすると、すごく作りやすくなるんだよ。どんなお客さんが来るのか、どの価格帯が動きやすいのか、パンの回転率はどうか——。この辺を考えて決めていくと、開業後の迷いがグッと減るんだ。」

ユミ「たしかに、ターゲットが決まっているとパンも選びやすいですね。」

● 物件選びこそパン屋開業の“最大の山場”

ユミ「物件って、こんなに気をつけなきゃいけないんですね…!」

師匠「そうなんだよ。パン屋は設備が多いし熱も出るし、普通の飲食店より条件がシビアなんだ。給排水、電気容量、換気、動線、ダクト、どれか一つでも欠けると後で困る。だから、雰囲気だけで決めるのは本当に危険なんだ。」

ユミ「はい!今日の話を聞いて、物件を見る目がかなり変わりました。」

● まずは“現実を知ること”からスタート

師匠「パン屋の開業は、技術の前に“準備力”が大事なんだ。コンセプトで方向性を決めて、物件で現実を見極める。この2つがしっかりしていれば、その後の準備がかなりラクになるよ。」

ユミ「なるほど! 焦らずに、順番を大事にして進めていきます。」

師匠「その気持ちがあれば十分だよ。次は、コンセプトを“形にする”ための厨房設備と仕込みのリアルについて話していこうか。」

ユミ「お願いします! 次も楽しみです!」

次回、「厨房設備と仕込みのリアル…必要な機材と費用が丸わかり」に続きます。

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