忙しいのに儲からない。…それ、看板メニューが一番危険かもしれません。

経営ノウハウ

「うちの店は看板商品があるから大丈夫」

そう思っているのに、なぜかお金が残らない。
忙しい日は確かに売上が上がるのに、月末の数字を見ると不安になる。

飲食店の現場では、この矛盾がとても頻繁に起きています。
その原因の中心にあることが多いのが、実は“看板メニュー”です。

集客商品と儲かる商品は、必ずしも一致しません。
むしろ、看板になればなるほど「一番お金を失いやすい商品」に育ってしまうケースもあります。

今回は、メニュー開発と利益構造のズレという視点から、「なぜ看板メニューが経営リスクになりやすいのか」「どう設計すればいいのか」を整理します。

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目次

■ 看板メニューほど「儲かっている気がする」罠

看板メニューは、多くの店で「一番売れている商品」「店の顔」「お客さんが必ず頼む商品」という位置づけになります。

そのため自然と、「この商品が一番儲かっているはずです」という認識が生まれます。
しかし実際の現場では、この“感覚”こそが経営判断を最も狂わせやすいポイントになります。

● 売上が多い=利益が多いという思い込み

看板メニューは注文率が高く、提供回数も多いため、売上数字への貢献度は確かに大きくなります。
忙しい日は一日中その商品を作り続け、「今日はこれだけ出たから儲かったはずです」と感じやすくなります。

しかし、売上と利益はまったく別物です。
どれだけ売れていても、そこに過剰な手間・人員・時間がかかっていれば、利益は簡単に削られていきます。

● 「現場の忙しさ」が錯覚を生む

人は、忙しさと価値を無意識に結びつけます。
厨房がその商品で回っているほど、「この商品が店を支えている」という感覚が強化されます。

しかし実際には、忙しさは利益の証拠ではなく、負荷が集中しているサインであることも多いのです。

● 数字で見ない限り、本当の姿は分からない

看板メニューほど、「店の象徴」「外せない存在」という感情が入り込みやすく、冷静な検証が後回しになります。

原価率だけでなく、仕込み時間、ピーク中の専有時間、必要人員、ミスやロスまで含めて見ない限り、その商品が本当に“稼いでいるか”は判断できません。

看板メニューは、儲かっていることもあれば、儲かっている“気がするだけ”のこともあります。
この見極めを曖昧にしたまま経営を続けることが、後々の資金苦や疲弊につながっていきます。

■ 看板商品が厨房を壊すメカニズム

看板商品は、味や見た目、話題性を重視して設計されることが多く、その分だけ工程が増えやすくなります。
ここに経営上の落とし穴があります。

売れているうちは問題が見えにくいのですが、厨房では確実に“歪み”が蓄積していきます。

● 手間が一点に集中する構造

看板商品は、専用の仕込み、繊細な火入れ、複雑な盛り付けなど、「その商品だけの作業」を抱えやすくなります。

その結果、特定のポジションや設備に負荷が集中し、厨房全体の流れがその一品に引きずられる構造が生まれます。

● ピーク時に“詰まる”商品になりやすい

注文が集中する時間帯ほど、看板商品はボトルネックになります。
一人が張り付きになり、他の調理が止まり、提供全体が遅れ始めます。

遅れを取り戻そうとして無理な同時進行が増え、品質低下やミス、ロスが発生しやすくなります。

● 他メニューと現場を巻き込んで壊れていく

看板商品が重くなるほど、他の料理は後回しになり、仕込みの段取り、動線、スタッフ配置までもが“看板基準”で組み替えられていきます。

結果として、厨房は柔軟性を失い、「忙しいのに回らない」「人が増えても楽にならない」状態に陥ります。
看板商品は売上を作る一方で、厨房構造を静かに破壊していきます。

このメカニズムを理解せずに放置すると、人気と引き換えに現場体力を削り続けることになります。

■ 原価より怖い“作業原価”という考え方

多くの飲食店では、メニューの良し悪しを「原価率」で判断します。
しかし、看板メニューが経営を苦しくする最大の理由は、材料原価ではなく“作業原価”にあります。

ここを見誤ると、「原価は低いのに儲からない商品」が店の中心に居座り続けます。

● 作業原価とは「人と時間のコスト」です

作業原価とは、その一皿を提供するまでに必要な「仕込み時間」「ピーク中の占有時間」「関わる人数」「工程数」「教育コスト」「失敗リスク」など、人と現場をどれだけ使っているかという視点です。

例えば原価率30%でも、毎日2時間の仕込みが必要で、営業中は一人が張り付きになり、ミスが出やすい商品であれば、実質的なコストはかなり高くなります。

● 原価表に載らない負担が利益を削る

作業原価は、原価表や試算表にはほとんど表れません。
しかし実際には、人件費、残業、疲弊、教育期間の長期化、ロス増加という形で、確実に利益を侵食します。

看板メニューほどこの負担が見えにくく、「売れているから問題ない」と判断されやすくなります。

● 「何分・何工程・誰が」を言語化する

▶その商品は何分で作れますか。
▶何工程ありますか。
▶誰でも作れますか。
▶同時に何食出せますか。

この問いに答えられない看板メニューは、ほぼ確実に作業原価がブラックボックス化しています。
原価より怖いのは、「忙しさを生み続ける構造」です。

作業原価を直視しない限り、看板メニューは利益商品には育ちません。

■ 看板メニューが「逃げられない構造」を作る

看板メニューは、店の武器であると同時に、経営の自由度を奪う存在にもなります。

売れれば売れるほど、その商品を前提に店の構造が固定されていき、気づかないうちに「逃げられない店」が出来上がっていきます。

● 外せない・変えられない・上げられない

看板メニューは集客の軸になりやすく、簡単に外せません。
値上げにも強い抵抗が生まれ、少し仕様を変えるだけでもクレームや評価低下が怖くなります。

その結果、原価が上がっても、手間が増えても、「動かせない商品」として据え置かれ続けます。

● 看板基準で固まっていく店の構造

人員数、シフト、厨房レイアウト、設備、仕込み量、営業時間。
これらがすべて看板メニューを回すために最適化されていきます。

一度この構造ができると、「もっと楽な店にする」「小さく回す」「業態を寄せる」といった判断が極端に難しくなります。

● 改善も撤退も選びにくくなる

看板メニューが店の中心にある限り、メニュー改変は売上減少リスクを伴い、業態転換や縮小、撤退の判断にも大きな心理的・実務的ブレーキがかかります。

結果として、本来なら早く打てたはずの改善策が先送りされ、体力を削り続ける経営になります。
看板メニューは、うまく設計されれば資産になります。

しかし構造を無視して育った看板は、経営を縛る固定負債に変わります。
売れている今こそ、「この商品がなかったら、この店はどうなるか」を一度考えてみる必要があります。

■ 主力を育てる順番を間違えると、店は歪む

多くの店が、開業初期から「看板メニューを作ろう」と考えます。

しかし、主力を育てる順番を間違えると、店は最初から歪んだ構造を抱えることになります。

● 最初に育てるべきは「経営主力」です

開業直後に優先すべきは、「目立つ商品」や「話題になる商品」ではありません。
先に固めるべきなのは、

・少人数でも回る
・仕込みと提供が安定する
・誰でも再現できる
・出数が増えても壊れない

こうした条件を満たす“経営主力”です。
これが店の土台になります。

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● 集客商品は「後から強くする」

経営主力が整っていない状態で看板商品を前に出すと、厨房も人も利益構造も、その一品に引きずられて設計されてしまいます。

本来は、回る構造・残る構造を作った上で、その上に象徴商品を乗せていくべきです。
看板は作るものではなく、育つものです。

● 主力の順番が店の未来を決める

先に経営主力を育てた店は、値上げ、メニュー改定、人員調整、業態変更といった経営判断がしやすくなります。
逆に、先に看板を作った店は、その商品を守るための経営になり、自由度を失っていきます。

主力を何にするかよりも重要なのは、どの順番で主力にするかです。
この順番が、楽に続く店になるか、苦しく続く店になるかを分けていきます。

■ まとめ:看板は資産にも、固定負債にもなります

看板メニューは、店の顔になり、集客を支え、ブランドを作る大きな力を持っています。

しかし同時に、設計を間違えると「一番お金を失いやすい存在」にもなります。

● 看板が資産になる店、負債になる店

看板が資産として機能している店は、その商品が「厨房を回し」「人を育て」「利益を残す」構造の中に置かれています。

一方で負債になる店は、「忙しさ」「象徴性」「思い入れ」に守られ、検証されないまま中心に居座っています。
売れているのに苦しい店の多くは、ここが逆転しています。

● 原価ではなく“構造”で見る

看板を評価するときに見るべきなのは、原価率だけではありません。
その一皿が、何分で作れて、何人必要で、ピークに何を止めているのか。

厨房、動線、人員、教育、数字。そのすべてにどう影響しているかという「構造視点」が欠かせません。

● 看板は「耐えられる店」にしか育ちません

看板メニューは作るものではなく、育つものです。先に回る構造と残る構造を作り、その上で育った看板だけが、本当の資産になります。

もし今、忙しいのに楽にならない、売れているのに残らないと感じているなら、一度その“看板”を疑ってみてください。

そこには、店の未来を変えるヒントが必ずあります。

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